ARTIST STATEMENT
海面を覆う白波を目で追いながら
我が身のリズムと波がシンクロしていくのを感じた。
圧倒的な開放と緊張が訪れ、直観のようなものが身体を貫いた。
宇宙のリズムの中、ロゴスという臨界点を超え、
一つの場において極をなしえる二つのものが生れた。
「一つは水、一つは火と呼ばれた」
冨森 士司
冨森の観たものは自分のうちに存在する創造力の源、あるいは、彼の本質と言っても良いものであったのかもしれない。 それ以降、彼はこのビジョン、何かが生まれ出てくる場、宇宙のリズムと自分という生命体とが共鳴しあい、境界をも失う場、認識できるものとそうでないものがせめぎ合うような場を根幹において制作している。それは表現するというよりはむしろ、彼の内にある普段認識することが難しい何かを、制作という身体行為をとおして解き放つ行為である。彼の思考ではなく、身体のリズムと五感が紡ぎだしていくのである。
冨森士司はアーテイストとしてのアカデミックな訓練を受けず、独学で自分の表現を追求してきた。商業的に作品を制作していた時代の、彼の具象的表現のレベルは高いものであったが、その表象、具象での表現の限界のようなものを感じ取り、その後自分の表現とは何かを模索し続けた結果、現在の抽象表現にたどり着く。
彼の作品を前にすると、まずのその平面作品の持つ強い圧、力に圧倒される。平面作品ではあるがマチエールは深く刻まれており、レリーフに近いものがあり、その材料には主に火山のマグマを冷やした出来た真珠岩が使われる。彼が用いるもう一つの材料が和紙で、和紙を作る段階から様々な材料を混ぜ制作している。まさに火と水が密接に関わる素材を使い火、水、ロゴスを表現するのだ。
制作プロセスは計算不可能で、再表限できるものではなく、”今“を積み重ねていく。言葉によるマニュピレーションは意味をなさず、ただただ表面を刻み、自分と向き合いそして、刻み、自分の存在を確認するかのような作業である。故に一人の人間としての存在を問われているかのような作業に向き合える彼の強さは、彼の日々の営みによるところが大きいと感じられる。自分の命を支える米を四国にある自らの田で作り、半自給自足的な生活の中で、生活に向き合い、制作を行う晴耕雨読の日々から作り上げられる。
冨森は地球から分離した一つの命として、地球とのつながり、太陽系とのつながりを記憶している彼の体内の細胞からインスピレーションを得ようとしている。そのまっすぐな力強さは植物が天と地に向かって伸びていくしなやかさのようでもあり、同時に個として存在する者が獣のように波間でもがいているようでもある。
プロフィール
冨森士司 / TOMIMORI HITOSHI
1970年、香川県出身。
2000年 東京都墨田区東駒形スタジオ設立
主な個展
2023年, 個展「THE INITIAL REVOLUTION 0/1679000000000」,
法然院, 京都
2023年, 個展「交響「いろは」うた -とどまることのない純粋なエネルギ―の流れ- 」,
喜多美術館, 奈良
2021年, 個展「骨と空 陰翳、その象」,
法然院, 京都
2019年, 個展「冨森士司 展 Vol.2 - 身体行為を通して解き放つ、一体となる。- 」,
spectrum gallery, 大阪
2019年, 個展「冨森士司 展 Vol.1 - Water, Fire and Logos - 」,
法然院, 京都
主なグループ展・アートフェア
2022年, Robert Yelllin Yakimono Gallery & SPECTRUM ART GALLERY&LAB
Collaborative Exhibition 2022, 京都 日本
2018年, Affordable Art Fair, Carte Scoperte, Milan, イタリア
2018年, Work on Paper Art Fair, Gilmen Gallery, Lugano, スイス
2017年, Affordable Art Fair, Carte Scoperte, Milan, イタリア
2017年, Work on Paper Art Fair, Gilmen Gallery, Lugano, スイス
2016年, Concorte Arte Milano, Milan, イタリア
2007年, Two Persons Show, Nippon Gallery, NY, アメリカ
2003年, Two Persons Show, Nippon Gallery, NY, アメリカ